【群馬県 | スタートアップ支援プログラムRAITO2024成果発表会】採択企業4社が、注力してきたサービスと5か月間にわたる成果を発表!過去の参加企業との新たなシナジーにも発展
「ぐんまスタートアップアクセラレーションプログラム(RAITO)2024」。群馬県内のスタートアップ企業を5か月間にわたって短期集中的に支援する同プロジェクト。今回採択された4社は2024年10月3日のキックオフから5ヶ月間、メンターとの1泊2日の水上合宿や中間報告会、多くの支援機関からのサポートを受けて様々な成長をしてきた。今回その集大成となる成果発表会を、3月5日に群馬県庁32階NETSUGENで開催。RAITOを通して、採択者たちは一体どんなことを考え成長に繋げていったのか、それぞれの思いとともにメンターと駆け抜けた5か月間の成果をお届けしたい。

3月5日 群馬県庁32階NETSUGENで2024年度RAITO成果発表会を開催
契約者数100人達成!多忙な医師が手軽に情報収集を行える「MVidEra(エムヴィデラ)」を通じて医療業界の働き方改革を目指す【株式会社MU】
村田 悠典さん
プラン名:「AI×ヒトで実現する医学論文要約動画プラットフォーム」

株式会社MU 代表取締役 村田 悠典さん
生成AIによって、医学論文を要約動画に変換できるプラットフォーム「MVidEra(エムヴィデラ)」を提供する村田さん。当初は要約のみに注力していたものの、RAITO期間中の検証・営業を進める中で他のAIサービスとの差別化を図るために、検索、読む、書く、発信の4つに特化させた総合サイトへ転換。多忙な医師が手軽に情報収集を行えるよう、機能の刷新を図った。
サービス転換後はXの投稿やインフルエンサーコラボなどSNSマーケティング戦略に舵を切り、RAITO期間中の目標だった契約者数100人を見事に達成。サービスを体験したユーザーからは、「毎月20時間以上を要していた論文の検索時間が大幅に短縮された」「いきなり本文から検索できるのは他のAIにはない機能で助かる」など、好意的な意見が多数寄せられたと話す。
作業効率の大幅な短縮や、労働環境改善に貢献するのはもちろん、医療教育の向上、治療情報の迅速な把握など、多方面で医療業界に貢献できるのが、同サービスの魅力。将来的には最新の論文情報をインプットできる高性能AIの実装を目標に掲げ、業界全体の働き方改革により全ての人が質の高い医療を受けることができる世の中を作っていきたいと力強く語った。

「MVidEra(エムヴィデラ)」が普及することで医師の働き方改革が実現できる
誰とでも気軽に会話できる自動翻訳システムを開発。外国人のリモート診療を軸にビジネス確立を目指す【株式会社C&T】
瀧澤 清美さん
プラン名:「世界から言葉の壁で助けを呼べない人を無くす」

株式会社C&T 代表取締役社長 瀧澤 清美さん
かねてより瀧澤さんは、「緊急時に言葉の壁が原因で助けを呼べない人」を1人でも減らすための活動に尽力。聴覚・言語にハンディキャップを持つ人や、母国語しか話せない外国人が、誰とでも気軽に会話できる自動翻訳システム「Talk-Trans」の開発に力を注いできた。
「Talk-Trans」は、スマホと連携させて言語を交わすだけで、双方向の迅速なコミュニケーションができるAIシステム。Bluetooth接続のため、PCを通せばオンライン対話も可能だ。レッグスピーカーの形状でハンズフリーのため、聴診器の使用や検脈など、両手を空ける必要がある緊急時の医療現場でも、使いやすいシステムとなっている。
RAITOではこれらの機能を検証するため、プログラムを通じてみなかみ町の観光協会窓口をはじめ、伊香保温泉、草津温泉、四万温泉に協力を仰ぎ実証実験を実施。訪日外国人への対応を通して、使用感を探った。さらには、医療施設や前橋市役所の国際課にも設置し、同様に外国人とコミュニケーションをとってもらったという。
結果として、なかなか接客の機会に恵まれなかったり、費用対効果の面で課題を感じさせる部分こそあったものの、「機能の確認とフィードバックは十分に進んだ」と、瀧澤さんは手応えを語る。特に医療面においては、リモートで外国人診療を行える機関はまだないため、ビジネスの可能性は大いにあるという。
将来展望としては、さらなるインバウンド需要の増加を見越し、双方向同時翻訳ができる機能を拡充していきたいと語る瀧澤さん。いずれは、全国展開も視野に入れたいと意気込んだ。

自動翻訳システム「Talk-Trans」で、緊急時や日常の大切な場面で言語の壁を取り払う
地域包括ケアの実現を目指して全47都道府県への提案を完了!実証実験で得た手応えを励みに、さらなる製品の改良に邁進【株式会社LYNXS】
伊藤 由起子さん
プラン名:「介護DXプラットフォームで地域包括ケアの実現」

株式会社LYNXS 代表取締役 伊藤 由起子さん
株式会社LYNXSでは、在宅医療業界がスムーズに情報共有を行えるための多職種連携プラットフォームを提供する。在宅ケアは非常に多岐にわたる業務で、医者、ヘルパー、ケアマネージャーなど複数人の専門ワーカーが必要となる反面、患者の情報は別々のシステムで管理されている課題があった。その煩雑した情報を一括管理し、簡単に情報共有を可能にしているのが、同社の多職種連携プラットフォームだ。
群馬県と山梨県では既に実験を開始し、他47都道府県と東京都23区に同システムの実証実験を提案中だ。利用促進策の不足など、当初は課題も抱えていたが、メンターとの二人三脚でフィードバックを繰り返して少しずつ改善。システム確立に向けて好感触を得ている。
医療従事者たちに、Web上で一斉に依頼や施設の受け入れ要請ができ、電話での呼び出しをはじめとする様々な手間を軽減。従業者側も、メールやLINEなど、普段使っているシステムで情報を確認できるため、作業効率が格段に向上する。

多職種連携プラットフォームの利用により作業効率が劇的に変わる
メンターを務める池森裕毅氏からはRAITO期間終了後も引き続きの支援・出資が決定。伊藤さんは「今後も気を引き締めてさらなるスキルアップに努めたい」と力を込めて展望を語った。
地域に関わる人達と試行錯誤し、リアルとオンラインを掛け合わせた人×企業の連携を実現【クレイン】
大和 隆生さん
プラン名:「群馬の地域イノベーションプラットフォームGALYEA(ガレア)」

クレイン代表 大和 隆生さん
群馬県の人手不足を解消するための活動を行う大和さん。地域の企業や人が、互いの課題解決に向けて協力し合えるオープンイノベーションプラットフォーム「GALYEA (ガレア)」を展開している。合わせて、前橋市の空き家をリノベーションしたコミュニティスペースも運営。オンラインとリアルの両面で、企業と人材をつなぐサービスを展開する。
成果発表会では実例として、群馬県産オリーブの栽培と広報活動を展開するジャングルデリバリー社との取り組みを紹介した。同社は、地域のイベンターと連携し、オリーブの魅力を伝えるイベント「オリーブ茶会」を開催。それをきっかけに、商品開発を目指す新規プロジェクトを県内の人たちと立ち上げた。今後は、見学ツアーの開催も企画されており、地元大学生のみならず東京の学生も参加し始めているという。
RAITO期間を通して、「より良い運営に向けての検討を重ね、地域住民やメンターと意見を交わし合ってきた中、ようやく形になってきた」と大和さんは話す。リアルでのコラボレーションはもちろん、Discordやメタバースを通して、北海道、九州など遠方の人ともコミュニケーションが活発化。これからも地域の人たちはもちろん、全国各地の人材も巻き込み、検討会を行っていきたいと前を向いた。
短期的なマイルストーンとしては、5月までに無料のトライアル企業を2社募集。その後8月までに追加募集を行い、成果と課題を可視化しながら、2026年の本格始動を目指していく。加えて、地域の人たちがプロジェクトを立ち上げ、具体的なビジネスに落とし込む企業の活動資金を支援する「地域エンパワラー」という新たな取り組みも紹介した。

オープンイノベーションプラットフォーム「GALYEA (ガレア)」をハブにオンライン・リアルの両方で課題解決のプロジェクトを立ち上げる。
過去の採択企業3社も登壇し成果を報告!今後は卒業者同士が連携し合ったさらなるシナジーにも期待
4社の成果報告後には、過去同プログラムに参加した企業の代表者がマイクを握り、当時の様子を振り返りながら、その後の経過を発表した。第1期(2021年)にAIを⽤いた画像・映像の介護業界向け解析事業を展開した株式会社ファントムは、RAITO期間中に「多業種展開に向けた情報発信」などを目指して奔走。この時の活動が功を奏し、現在はホテル業界や展示会関連からも案件を獲得しているという。
さらに、第2期(2022年)に参加した株式会社コルシーは、地域の医師不足の解決を目指し、医師用コワーキングスペースの作成に尽力。紆余曲折あり、現在はビジネスモデルを変えたが、別の視点から地域と医師をつなぐ支援は実現している。「RAITOで経験していたことが、今になって大きく役立っています」と言い切る。
第3期(2023年)にデイサービス特化の送迎委託サービス「CareDrive」を提案したソーシャルムーバー株式会社が最後に登壇して現状を報告。当時はビジネス確立に向けた資金支援をメンターと協力し合って70社以上に打診し、実現せずにタイムアップを迎えてしまったが、2025年1月に結実。ファンド企業・1982インパクトファンドから、5,000万円の資金を獲得できたと笑顔を見せた。
また、質疑応答の時間には、近い事業ビジョンを掲げている企業同士の軽いディスカッションにも発展。その場で新しいアイデアについて話し合いが行われるなど、新たなシナジーも生まれた。

RAITO採択社の今後に期待が寄せられる
採択者が増えていくとともに、参加者同士の絆や縁も芽生え始めている「RAITO」の取り組み。今回の4社はもちろん、2024年以前の採択企業も含めて、彼らがこれからどんな相乗効果を生み出していくのか、来年以降の活動にも注視していきたい。