【群馬イノベーションアワード2024】群馬から未来を創る挑戦者たちの熱いプレゼン!大賞は「『映画づくり=まちづくり』群馬発の世界で戦える俳優と映画づくりプロジェクト」飯塚花笑さん
今年で12回目となる群馬イノベーションアワード(GIA)。世界に新たな価値を生み出す起業家や、アイデアを持った若い人材を群馬県から発掘しようというプログラムだ。審査委員長として慶応義塾大学 総合政策学部教授の國領二郎氏、審査委員としてジンズホールディングス 代表取締役CEO田中 仁氏、オープンハウスグループ コミュニケーションデザイン本部長の白井淳氏、カインズ 代表取締役会長の土屋裕雅氏、群馬銀行 代表取締役頭取の深井彰彦氏、上毛新聞社 代表取締役社長の関口雅弘氏らを迎え厳正な審査にあたる。今回、応募者の中から厳しい審査を勝ち抜いてファイナリストとして選ばれた13名が、2024年12月14日(土)に日本トーターグリーンドーム前橋にて公開プレゼンを行った。今回は、その熱い大会の様子をお届けしたい。
様々な「挑戦」が詰まったGIA2024が幕を開ける
開幕前から熱気に包まれた会場、そのオープニングアクトを務めたのは群馬県をベースに活動するラッパー「NAIKA MC」だ。新曲をひっさげ、マイクと言葉を巧みに操り会場のボルテージを高めていく。いよいよファイナリスト達によるプレゼンテーションの始まりだ。独自の新しいビジネスプランを提案する「ビジネスプラン部門」と、独自の新しいビジネスモデルを開発し発展させている事業実例の「ベンチャー部門」に分かれプレゼンを行う。
トップバッターはビジネスプラン部門、高校生以下の部。一組目は「トラッチング~旅行者と地域を繋ぐプラットフォーム~」群馬県立前橋商業高等学校3年の江戸美月さん。2組目は「発見!アレルゲン!!」群馬県立桐生高等学校3年の根子優太さん。3組目は「危険運転防止アプリ『SRR』」群馬県立前橋東高等学校2年の佐野結愛さんと天田ヒカリさん。4組目は「みんなのオアシス:インクルーシブ遊具による公園革命」ぐんま国際アカデミー中等部2年の濱島陽奈さん。
続いて大学生・専門学校生の部、1組目は「群馬から世界へ!五感とAIで創る新しい医療の形」群馬大学5年の宮川拓也さん。2組目は「保育・看護・介護のプロフェッショナルへ贈るポイントカード」慶応義塾大学3年の渡邊光祐さん。3組目は「ココロカラー~誰一人残さない環境を~」共愛学園前橋国際大学3年の春山奈緒さん。
学生たちの発表が終わると、ステージの雰囲気がガラリと変化。ブレイクダンサーSHADEとMakoによるダンスパフォーマンスで場の熱量を一気に加速させる。その勢いのまま舞台はビジネスプラン部門、一般の部へ。
1組目は「『筋肉ではなく神経を鍛える健康メソッド』neuron method academyの設立にむけて」にしざわ接骨院・院長の西澤洋介さん。2組目は「AIで業務に革命を。安心してDXに挑める社会をつくる」株式会社デジタルスイッチ・代表取締役の田中秀彰さん。3組目は「好きが広がるラジオアプリ『shelfs(シェルフス)』~広告は新たな体験に~」株式会社FM桐生・事業本部長の小保方貴之さん。
続いてベンチャー部門の1組目は「『映画づくり=まちづくり』群馬発の世界で戦える俳優と映画づくりプロジェクト」合同会社スタジオ6.11・代表社員であり映画監督・脚本家の飯塚花笑さん。2組目は「洗車文化を創る~群馬発!トンネル洗車機を用いた洗車場運営への挑戦~」株式会社Splash Brothers・取締役の岡村昌輝さん。3組目は「ヒトとAIが共創する医学論文-AI要約動画プラットフォーム」株式会社MU・代表取締役の村田悠典さん。
全ファイナリストのプレゼンが終了すると、あとは投票結果を待つ。その間、群馬県ゆかりの若手起業家によるトークセッションが始まる。concon株式会社 代表取締役の髙橋史好さん、株式会社Dazy 代表取締役の林龍男さん、株式会社Ay 代表取締役の村上采さん、合同会社NowNever. 代表取締役のアジズ・アフメッドさんの4名がそれぞれの起業のきっかけを語ってくれた。「才能ではなく、泥臭くこつこつやり続ける力が大切」「好きなことで生きていける道の一つが『起業』」という言葉に、発表を終えたファイナリスト達も熱のこもったまなざしとともに耳を傾けた。
トークセッションのあとは表彰式。大賞は全部門・部から1組、入賞は各部門・部から1組選ばれる。入賞特典は「GIA起業家と行く海外研修ツアー」、それに加え群馬イノベーション会議の参加資格、創業支援などを受けることができる。
世界で戦える俳優と映画を群馬から。大賞を受賞したのは「『映画づくり=まちづくり』群馬発の世界で戦える俳優と映画づくりプロジェクト」飯塚花笑さん
大賞に輝いたのは、合同会社スタジオ6.11・代表社員であり映画監督・脚本家の飯塚花笑さん。群馬県在住の飯塚さんは前橋市の商店街にスタジオを構え、世界でロードショーされる映画の製作・コーディネートや俳優の育成事業を行っている。
プレゼンでは、映画「ロッキー」の主人公に扮したボクサースタイルで登場。顔には特殊メイクを施し、映画の世界から飛び出してきたようないでたちだ。仲間からの声援も熱い。
「群馬発の世界で戦える俳優と映画づくり」をプロジェクトに掲げており、単なるご当地映画に終わらない事業を展開している。
このプロジェクトは、映画撮影のロケ地を群馬県に誘致することにより、経済的効果をもたらし映画作りだけでなく地域活性化にもつなげようという内容だ。実際、飯塚さんが監督を務めた映画撮影において、群馬県内で支払われた経費は約2300万円。県内で過疎化が進んでいる地域で撮影予定の映画についても、経済効果の試算額は約3000万円を見込んでいるという。これが、映画作り=町づくりの仕組みだ。
飯塚さん率いるスタジオと地域が連携し、映画撮影チームへのワンストップ支援を実現。映画を撮影することで地域経済が動き、所属しているレッスン生の出演機会を確実に増やすことで世界で活躍できる人材の育成にもつながる。実際に同社のレッスンを経て映画出演の夢を実現した俳優もおり、手ごたえの感じられるプロジェクトだ。
プレゼンの最後には、応援にも駆け付けていた「平均年齢42歳のアイドルユニット・高崎観音ガールズ」のMVを放映。企業とのタイアップも募集中ということで、多方面から地元群馬の活性化を担っている。
そんな独創的なビジネスモデルの飯塚さんが、GIA2024の大賞に輝いた。
大賞として名前を呼ばれた瞬間湧き上がる仲間からの声援に、高く拳を上げ応じた飯塚さん。受賞に際し、「自分だけの努力ではなく、群馬で映画を盛り上げようと力を貸してくれた仲間たちの協力があってここに立てている。これからも仲間たちと結託し、協賛企業ともより連携を強め映画を盛り上げ、群馬県が盛り上がるよう地域貢献をしたい」と、映画と仲間、そして群馬への熱い思いを語った。
各部門の入賞者4名と、今後の期待を込めた奨励賞1名が選ばれる
惜しくも大賞は逃してしまったが、各部門にて優れたアイデアを持った4名と、今後の成長が期待される奨励賞1名が選出された。
入賞:ビジネスプラン部門 高校生以下の部 江戸美月さん
外国人旅行者がニッチなローカル体験を求めるようになったことに着目し、旅行者と現地に住んでいる人を繋げるプラットフォーム「トラッチング」を提案した。プラットフォームにはまず自治体がトップページを制作、そこに地域の事業者や住民(ガイド)が登録し「地域のお祭りへの参加」「子供たちと河川敷でスポーツ」といったニッチな体験を提供する。旅行者が申し込みをすればマッチング成立となる。今後も、実現化に向けてプランをブラッシュアップしたいと語った。
入賞:ビジネスプラン部門 大学・専門学校生の部 渡邊光祐さん
人材不足に直面している保育・看護・介護業界で働く人材に限定したポイントカードを提案。自治体や企業と連携し、日々の買い物において通常のポイントカードに比べ非常に高い還元率を設定する。地元での消費が活発になり人材が定着、そして悩んでいる職業の人々を笑顔にできるとした。政策を変えることには限度があるが、お金の使い道で優遇することはできると考え、スピード感をもって事業化を進める必要性を訴えた。
入賞:ビジネスプラン部門 一般の部 田中秀彰さん
「システム導入で後悔する企業をゼロにする」というビジョンのもと、業務改善とIT人材の育成が実現できる完全成果保障の実践型DX研修サービスについてアピールした。DXを導入したが成果が出ていない中小企業には、IT人材やノウハウがないことが原因の一つ。そこで「自走」を目的とした実践型のDX研修サービスを提案。自社の課題を特定し、受講生自らAIを使ってアプリを開発する。今後ますます成長が見込まれるAIやデジタルの市場に、群馬県から挑戦したいと意気込んだ。
入賞:ベンチャー部門 村田悠典さん
医療論文のAI要約動画プラットフォームをリリース、主に若手医師の勉強効率をアップさせ公正中立な医療情報の提供を可能にする。村田さんは製薬企業の営業を経験する中で、「最新の良い薬が出ていてもその情報が医師に届かない」という現状を目の当たりにしてきた。そこで、限られた時間の中でも情報を届けられるよう論文のPDFをAIに読み込ませ2~3分のショート動画を生成、プラットフォームにて提供している。適切な医療情報を群馬から届けるため、さらなるアップデートを重ねていくとした。
奨励賞:ビジネスプラン大学・専門の部 春山奈緒さん
生徒児童の精神状態を色で可視化するインソール・アプリ「ココロカラー」を開発。不登校の生徒が増えている現状と自身が高校時代に思い悩んだ経験から生まれた当商品。生徒児童にとって身近であり動きが阻害されにくいインソール型を採用。直接的な言葉ではなく色で表示することで、ストレスにならないよう配慮している。生徒児童の精神状態にあった指導に活用できるとし、まずは私立学校をターゲットに2026年4月に商品化、そして100校の導入を目指すとした。
【編集後記】
空っ風が吹きすさぶ12月の群馬県で、この日一番「アツい」場所は間違いなく日本トーターグリーンドーム前橋だった。ファイナリスト達の研ぎ澄まされたビジネスアイデアから、群馬県にとどまらず日本、そして世界に挑戦するんだという熱い思いを受け取った。中でも学生の部では実体験からビジネスに繋げる発想力や、イメージだけに終わらない実現力に脱帽。未来を担う世代への期待を強く感じた。12年目を迎えた群馬イノベーションアワード。今後も新しい時代を産み出す「挑戦者」から目が離せない。(ライター:坂本史織)