【アジア初×完全無料】世界最先端の教育施設「TUMO Gunma(ツーモグンマ)」誕生の背景と、全国から注目が集まる理由とは!?
アルメニアで生まれ、世界へ広がってきたデジタルクリエイティブ教育プログラム「TUMO」。2025年、アジア初の拠点として群馬県高崎市にあるコンベンションセンター・Gメッセ群馬に「TUMO Gunma(ツーモグンマ)」が誕生したのはご存じでしょうか?
対象は12歳から18歳。3Dモデリング/ゲーム開発/グラフィックデザイン/アニメーション/プログラミング/ドローイング/モーショングラフィックス/映像制作と、8つのプログラムの中から、子どもたちは「自分のやりたいこと」を選んで学びを深めていきます。
「TUMOの目的は、単にITスキルを伸ばすことではありません。大切にしているのはヒューマンスキルを育むことです」と語るのはセンターマネージャー清水義教さん。なぜ群馬にTUMOが誕生したのか。なぜ世界基準の学びを提供できるのか。そして、群馬から世界へ挑戦する若者をどのように応援していくのか。その背景とビジョンを清水さんに伺いました。

「TUMO Gunma(ツーモグンマ)」 センターマネージャー 清水 義教さん
すべてが完全無料 デジタルクリエイティブ教育プログラムTUMOとは
ー「TUMO」はアルメニアで誕生したそうですが、その背景を教えてください
TUMOの始まりは、アルメニア系の家系であるシモニアン夫妻がきっかけです。夫妻は10代の頃にアメリカへ移住し、現在はテキサス州に住んでいます。そこで大手通信会社を共同で立ち上げるなど、ITビジネスで大きな成功を収めました。
アルメニアは、イスラム圏に囲まれたキリスト教国です。多くの人々が世界中に移り住んでいて、国内の人口が約300万人なのに対して、海外には800万〜1000万人ほどのアルメニア系の人たちがいるとも言われているのですが、シモニアン夫妻は成功で得たその富を「祖国アルメニアへの恩返しに使いたい」と寄付。それがTUMOの始まりとなりました。
当初は、首都エレバンの大きな公園にインターネットカフェをつくるという構想がありました。しかし、その計画を知った近くに住んでいたパパジアン夫妻が、「それではもったいないのではないか」と考えたんです。教育分野のバックグラウンドを持っていたパパジアン夫妻は、わずか1週間で教育プランを書き上げました。
その提案が受け入れられ、テクノロジーとクリエイティビティを学ぶ場所としてTUMOが誕生することになりました。

世界へ広がり、躍進を続ける教育プログラム「TUMO」
ーTUMOはWorld Innovation Summit for Education(WISE賞)を受賞されたそうですが、どのような賞なのでしょうか。
WISE賞は「教育のノーベル賞」と呼ばれていて、カタール財団が設立し、毎年、世界で最も革新的な教育プログラムを選んで表彰しています。
これまでの受賞者には、セーブ・ザ・チルドレンやTeach For Allなど、欧米の有名な団体が多く名を連ねています。そして2024〜2025年は、世界427団体から応募があったんですが、その中でTUMOが1位に選ばれたんです。
TUMOは今まで「世界標準の教育プラットフォームです」と言っていたんですが、「世界一のプログラムだよ」と言えるようになったわけですね。これまでの取り組みが評価された結果として、大変うれしく思っています。
ちなみに、カタール財団の公式サイトには「TUMOのどこを評価したのか」を説明するページがあるんですが、その中には、卒業生の成果も評価のポイントになっていました。実は卒業生の約半数が、アルメニアの平均収入の3倍の収入を得ているというデータがあるんです。アルメニアではこれまでに約7万人の卒業生を輩出していますが、そのうち半数ほどが平均年収の3倍の収入を得ているとされています。
これは平均的なアルメニア人とTUMOの卒業生の違いが、はっきりと現れた部分です。TUMOの卒業生は、進学や就職をしたあとでも、新しいスキルを楽しく、積極的に学び続けます。つまり、自分から学び続ける姿勢を持っているというのが、TUMO生の大きな特徴なんです。
ーTUMOの教育方針を教えてください。
TUMOの教育のベースにあるのは、「ウォークアウェイ・ペダゴジー(Pedagogy)」という考え方です。これは、もし学校や親から「こうしなさい」という指示がなかったら、人はどのように効果的に、自発的に学ぶのかを考えた教育です。
ティーンエイジャーは「study(勉強)」は嫌いでも、「learn(学ぶ)」こと自体は好きだと言われています。例えば「これを覚えなさい」「この大学に行きなさい」というのは勉強ですが、TUMOでは、子どもたちが自発的に学びたくなる気持ちを重視しています。
パパジアン氏がすごいのは、学びを「仕組み」として設計したことです。プログラムの流れに沿って進めていくことで、知らないうちにスキルが身についていくようになっています。楽しみながら、確実に力が身につく。そうした学びの仕組みをシステマティックに作り上げたことが、TUMOの特徴です。

開放感あふれる場で自発的に学びたくなる環境をつくる(写真:TUMO Gunma)
ー他のデジタル教育スクールとの違いを教えてください
TUMOは、ITスキルを身につけてプログラマーになることや、起業させることを目標にした教育ではありません。ITを学べる場所は今や数多くありますが、TUMOが大切にしているのは「人との関わり」です。
コーチが一方的に教えるのでなく、一緒に考え、会話をしながらコミュニケーションを重ねていく。その中で、ITスキルが自然と身についていく仕組みです。
つまり、TUMOの目的は単にITスキルを強化することではありません。大切にしているのは、ビジョンや価値観を伝え、主体的に学ぶ力を育てることです。
ここで出会う友達やコーチが好きだから通いたい。そんな経験を重ねる中で、「ここに来て人生が変わった」と思えるような場になってほしいですね。
ーTUMOは完全無料とのことですが、どんな子どもが通っていますか。
はい。全て無料です。TUMOには入学試験もありませんし、12歳から18歳の子ども(高校卒業まで)であれば基本的には誰でも参加できます。
「プログラミングをやりたい」「デザインを学びたい」といった目的がなくてもいい。「なんとなく面白そう」という気持ちで、気軽に来てもらってもいいと思っています。
TUMOは、12歳から世界に触れられることに大きな価値があります。アルメニア出身の世界的エンジニアとつながる機会があったり、英語に触れたり、さまざまな個性を持つ子どもたちが集まっていますので、ダイバーシティのある環境の中で、新しい出会いや刺激があります。
例えば、学校に馴染めず、不登校になってしまった子でも、ここでは自分のペースで、やりたいことに取り組むことができます。さらに埼玉や栃木など県外から通う生徒もいます。最近、千葉県の木更津から通いたいという子もいて、片道3時間かけて通う予定です。
つまり、ここは、みんなに開かれた学びの場です。学び方を見つけたり、友達をつくったりする場所として来てもらいたい。そんな場であってほしいと思っています。
開かれた学びのコミュニティ「TUMO Gunma」の誕生
ーなぜアジア初の「TUMO」が群馬県に誕生したのでしょうか。
きっかけになったのは、当時外務大臣だった河野さんです。河野さんは2018年に アルメニアのTUMO Center for Creative Technologies を視察しているんですが、そこで行われている教育プログラムのレベルの高さや、子どもたちが自分から学んでいく姿を見て、とても感銘を受けたそうです。「これを日本にも持ってこられないだろうか」と、思ったそうです。

アジア初の「TUMO」がGメッセ群馬4階に誕生
群馬県には、2040年を見据えた県の総合計画があり、デジタル社会への対応や、創造性や主体性を持つ人材の育成、そして世界とつながる若者を育てていくことなどが大きな柱になっています。こうした「未来の人づくり」という考え方はTUMOの理念とも重なる部分が多かったんです。そうした背景があって、TUMOはアジアで初めて群馬に開設されることになりました。
▪️新・群馬県総合計画
https://gunma-v.jp/

12歳から18歳の子どもたちを迎える、ブルーを貴重としたエントランス
ー生徒は、どのように学んでいきますか
まずはオリエンテーションにあたる「オンボーディング」から始まります。続いて「セルフラーニング」に進み、貸与したパソコンを使って自分で課題に取り組みます。
パソコンを開くと、自分が選んだカリキュラムや学習の進み具合が表示される仕組みになっています。もし途中で「やっぱりアニメーションではなくドローイングをやりたい」と思ったら、カリキュラムを変更することも可能です。つまり、生徒一人ひとりに合わせて学びが組み立てられる、“唯一無二のオリジナルカリキュラム”になっているんです。

セルフラーニングやワークショップも行う広々としたメインエリア
TUMO Gunmaには、およそ800名の生徒が登録をしていますが、カリキュラムはすべて違います。自分が選んだ分野や進み具合に合わせて、学びの内容が個別に組み立てられていくんです。そして、課題をクリアすると、次は専門家と実践的な内容に挑戦する「ワークショップ」に進みます。
ちなみに、ワークショップの部屋はガラス張りで、天井の上も開いていますから中の様子が良く分かります。生徒たちの楽しそうな様子や声が伝わることで、「早くワークショップに参加したい」というモチベーションにつながると思いますよ。
ワークショップで制作した作品は、TUMOのポートフォリオページにデータとして半永久的に保存されます。たとえばアニメーションやポスター、ゲームなど、各ワークショップで作った作品を積み重ねていくことで、自分だけの作品集が完成します。このポートフォリオはURLとして持ち出すことができ、進学や就職の際にも活用できます。

8つのプログラムから生徒一人ひとりに合わせて学びが組み立てられる
ーセルフラーニング、ワークショップを経て、いよいよラーニングラボですよね。ここでは何が学べますか。
ラーニングラボは、ワークショップを終えた生徒が参加できる、特別プログラムです。世界中のさまざまな専門家を講師として招くのですが、例えばアルメニアではディズニーのプロジェクトに関わっているクリエイターや、Googleのエンジニアが講師として参加することもあります。アルメニアのTUMO本部には、世界中のITやクリエイティブ分野の専門家が登録していて、その人たちによる特別な授業が行われるんです。
オンラインではなく、すべて対面で行うのがTUMOの方針です。オンラインだけではヒューマンスキルは育ちにくいと考えているので、お金や手間がかかっても、同じ場所で一緒に学ぶことを大切にしています。
ただし、このラーニングラボは、講師に対して条件があります。実は講師へ報酬を支払いません。ボランティアで参加してもらっています。TUMOが負担するのは、フライト代と宿泊費だけです。
かなり無理なお願いのように思えますが、これには理由があります。報酬が目的ではなく、「子どもたちのために何かしたい」「次世代を育てたい」という思いを持った人たちに来てもらいたいからです。結果として、子どもが好きで、若い世代を応援したいという人たちが集まってきます。
ちなみにTUMO Gunmaでも、すでにラーニングラボを実施しています。その時は、生徒に「物語」を考えてきてもらって、それを映像作品にするまでの工程を一緒に学びました。登場人物のイラストを描き、ストーリーに合わせて主題歌や歌詞、音楽を制作。さらにキャラクターを動かし、シーンごとの映像をつくって編集し、一本の動画に仕上げました。

アルメニアTUMO本部の専門家が来日。令和7年11月に開催したラーニングラボ
ー「生成AI」プログラムが新しく加わるんですよね。世界で初めてと聞いています。
はい、「生成AI」が新たに加わる予定です。実は世界で初めての取り組みなんです。現在アルメニアの本部で実験的に進められている段階で、今後は世界10か国ほどに広げていく計画がありますが、「まず群馬でやりたい」と名乗りを上げました。現在、正式導入に向けたパイロットプログラムの準備をしています。
TUMOが考えるAI教育のポイントは、単に作業を効率化することではありません。AIを人手不足の解消や、業務効率のために使うという考え方は多いですが、TUMOでは、AIを使って新しい産業や新しいクリエイティブを生み出す力を育てたいと考えています。つまり、AIに使われるのではなく、自分たちがAIを使いこなす側になるという発想です。
例えば、チャットボットのように「答えをもらうための道具」として使うのではありません。いわば、AIと一緒に学び、成長していくような使い方をしていきます。自分が学んだことをAIに教えたり、対話を重ねながら新しいアイデアを生み出したりする。そうした主体的でクリエイティブなAIの活用法を学べることが、このプログラムの大きな特徴です。

世界中のTUMOに導入されているデスク一体型「TUMOBILE」
ー大阪万博でも、展示デザイン部門で受賞されたとお伺いしましたが、どんな経緯があったのですか。
大阪万博では、複数で共同出展する「コモンズ」というエリアがあります。その建物の中に、アルメニア館のブースがありました。
実は、このアルメニア館のデザインを、アルメニア政府がTUMOに依頼していて、展示のデザインはすべてTUMOのチームが手がけたんです。それが銀賞を受賞しました。
展示の内容は、未来の学びをテーマにした空間になっていて、「まるでTUMOの紹介をしているのではないか」と思うくらいの構成でした。展示を通して、TUMOの取り組みがアルメニアのアイデンティティの一つとして発信されていたんだと思います。
群馬から世界とつながる学びへ
ー伊勢崎市内で誕生する「TUMOボックス」についても教えてください
実は、多くの子どもたちに体験してもらうため、昨年の夏休み県内各地から6台の「TUMOバス」を運行しました。その中で、継続して通いたいという意欲を示す生徒もいたのですが、バスと電車を乗り継いで片道約2時間を要し、交通費の負担も発生します。こうした事情を受け、学校側が支援に乗り出し、交通費を負担する形で学びの機会を後押してくれることになりました。
そのような嬉しい事例もありましたが、県内にはTUMO Gunma一か所しか拠点がないため通いづらい子どももいます。
こうした経験から生まれたのが「TUMOボックス」です。アルメニアの首都エレバンでは、本部の周辺にコンテナ型の小さな学習拠点が幾つも設置されています。そこでセルフラーニングを学び、ワークショップなどはメイン拠点で受ける仕組みになっています。
群馬でも2027年、伊勢崎にTUMOボックスが誕生する予定です。今後、こうした拠点が広がり、より多くの子どもたちが学べる環境が整うことを期待したいですね。

コンテナ型の小さな学習拠点「TUMOボックス」
-最後に、読者へのメッセージをお願いします。
TUMOのカリキュラムは、いわゆる学校のように「決められた穴埋めをしてポイントを稼ぐ」といった学び方ではありません。私たちはこれを「学びのジャーニー」と呼んでいるのですが、最終的な目標は、一人でも多くの生徒に「人生を変えるような学びの体験」を届けることなんです。私たちは2040年という未来を見据えてこの取り組みを進めています。
TUMOは「何万人集めるか」という規模を追うモデルではありません。スタッフが丁寧にサポートし、互いに関わりながら成長していく仕組みなので、量よりも質を大切にしています。そして皆さんに「群馬にこんな素晴らしい学びの場がある」ことを、もっと知ってほしいですね。
【編集後記】
TUMO Gunmaは青を基調とした広々とした空間に、開放感のある眺望エリアもあって、ひと言でいえば、ワクワクしてしまうような場所です。最新モデルのパソコンが並んでいますが、TUMOが目指しているのは、ITスキルを高めることではなく、ヒューマンスキルの向上だということに正直驚きました。
ここには「やってみたい」という気持ちを後押ししてくれるスタッフがいて、ともに学び、成長できる仲間がいます。清水さんのお話を伺う中で、TUMO Gunmaに関心を持つ子どもが一人でも増えてほしいと強く感じました。そして、子どもたちが、可能性を広げ、自分らしい未来を歩いていけると良いな、と一緒に応援したい気持ちになりました。(ライター:藤野 悦子)

