群馬発の珈琲ブランド【大和屋珈琲】が魅せる独自の世界| 陶磁器の融合と地元食材のコラボで至福のひとときを味わう

 1980年に創業し、珈琲の小売店舗展開や珈琲豆の卸・小売販売など幅広い業務を手がけている大和屋珈琲。2020年10月には、群馬県庁32階展望フロアに大和屋直営コーヒースタンドがオープンし、カフェ店舗としての新たなスタートを切った。今回はこだわりの焙煎方法や今後の展開について、株式会社大和屋 代表の平湯聡さんにお話を伺った。

「家でも楽しめる珈琲を」株式会社大和屋の歴史と取り組み

代表取締役平湯聡さん(左)、新規事業部信澤友希さん(右)
群馬県庁32階展望フロアの大和屋直営コーヒースタンドにて

 株式会社大和屋は、群馬県内に3店舗の直営店・全国に41店舗(2023年3月時点)のグループ店を持つ、群馬発の珈琲ブランドだ。

1980年創業の大和屋の歴史は、約7坪の小さな骨董店から始まった。元々珈琲の輸入販売を行う会社に勤めていた平湯正信さん(現会長)が独立し、趣味である骨董品を販売する店を構えたのが創業のきっかけだ。骨董品店を訪れたお客様に出していた珈琲が話題となったことがきっかけで、珈琲豆の販売事業を始めたのだ。

創業時は「珈琲を家で楽しむ」という習慣が世の中に根付いておらず、「珈琲は喫茶店で飲むもの」という考え方が主流だった。そんな中で大和屋は、国内でもかなり早い段階で珈琲豆の販売を行い、「家でも楽しめる珈琲」を提供してきた。「当時はデパ地下くらいでしか珈琲豆を買えなかったですし、インスタント豆で済ませてしまう人も多くいました。群馬県内で本格的な珈琲豆が買えるお店は珍しかったようです」と平湯さんは語る。

さらに、創業者の平湯正信さんは珈琲豆と共に、アンティークのカップやコーヒーミルを販売していた。「お気に入りのカップで、お気に入りの珈琲を」という先代の想いは現代表の平湯聡さんに受け継がれ、現在の「大和屋珈琲」のブランド力にもつながっている。

炭火焙煎の珈琲をゆっくり丁寧にドリップ

大和屋珈琲で販売される珈琲豆は、時間と手間をかけた「炭火焙煎」という焙煎方法が大きな特徴だ。通常、珈琲豆の焙煎は、ガスや電気を熱源にするのが一般的。しかし炭火を使って焙煎することで熱が豆の内部まで均一に回り、深い香りと豊かなコク、スモーキーで香ばしい風味が加わる。「お肉でもお魚でも、ガスや電気のグリルで焼くよりも、炭で焼いた方が美味しい。日本人の嗜好にあった日本人ならではの珈琲を作りたいというのが、創業当時からのポリシーなんです」と平湯さんは力強く語る。

お客様の声から始まった大和屋の珈琲は、日本人の食文化のエッセンスを取り入れた「和の珈琲」がコンセプトなのだ。

炭火焙煎珈琲×やきもの×お菓子の「ペアリング」を楽しむ

 同社が手がける「大和屋珈琲」は、炭火焙煎した高品質の珈琲豆と、さまざまな地域の陶磁器を販売するお店だ。高崎本店では、約1万点以上の選りすぐりの器が、珈琲のお供となるお菓子とともに販売されている。益子焼、信楽焼(しがらきやき)、備前焼、瀬戸焼など伝統的な民芸から、若手作家のコーヒーカップ等を扱っているのが特徴だ。さらに、店内2階には陶磁器をはじめとする作家の方が、自分の作品を展示・販売できるギャラリースペースも設けており、お客様との交流の場となっている。

高崎市「セレンディップ」様とのコラボ商品「珈琲フィナンシェ」(写真提供)

珈琲にも様々な銘柄と特徴があるように、焼き物にも産地によってデザインや色合いが違う。「好みの珈琲の味を選ぶように、その日の気分に合わせて気に入ったカップで珈琲を飲んでほしい」「さらに、珈琲に合うお菓子や珈琲を使用したお菓子も一緒に味わっていただけたら嬉しい」と平湯さんは話す。確かに、常時置かれている40種類以上の珈琲豆と、店内に並べられたお菓子の組み合わせは、どれにしようか想像するだけで楽しい。「『読書しながら』『音楽を聞きながら』など、様々なシチュエーションで珈琲を楽しむ際に、『スイーツ×珈琲』というペアリングを体験してもらいたい」という。

群馬ファーマーズプリン(写真提供)

また同社は珈琲豆と一緒に販売するお菓子に関しても、「より珈琲に合うもの」を目指してPB商品の開発を行っている最中だ。大和屋珈琲は、単に珈琲の味や香りを楽しむだけでなく「炭火焙煎珈琲×やきもの×お菓子」という独自のライフスタイルを提案し、和の心で味わう「珈琲文化」を提供している。

「カフェ店舗は群馬県の魅力を発信」地元食材×珈琲のコラボ

 2020年、大和屋の新たな挑戦が始まった。「群馬県庁32階展望フロア」という県のランドマークで、カフェ店舗を開店したのだ。2020年10月にオープンした「YAMATOYA COFFEE 32」のコンセプトは、「32階という素晴らしい眺望の中で最高の珈琲を楽しむ」。前橋市内を一望できる店内で、丁寧にハンドドリップされた大和屋オリジナルブレンドのコーヒーや、群馬県産の食材を使ったアレンジコーヒーが味わえる。

このようなカフェスタイルの店舗は、大和屋としても初めての取り組み。平湯さんは同店舗について「大和屋のブランドを広めていく上で重要な拠点になる」と考える。コンセプトの実現には、珈琲豆の品質もさることながら「珈琲を淹れる技術も重要」として、現在バリスタの教育にも力を入れているという。

また様々な企業・団体とのコラボ商品やコラボ出店も活発だ。代表的なコラボとして、群馬県利根郡みなかみ町にある「そば処くぼ田」とのコラボレーションしたコーヒーや、県内で自然農法の国産オリーブを生産する「ジャングルデリバリー」とのコラボメニューであるオリーブ抹茶ラテなどがある。

みなかみ町「そば処 くぼ田」とのコラボ商品「蕎麦の実焙煎珈琲-soba-」。YAMATOYA COFFEE32で限定販売後、現在は「そば処 くぼ田」のみで販売中。(写真提供)

「そば処くぼ田」とのコラボでは大和屋監修の元、蕎麦によく合うコーヒー「yuki」と、蕎麦の実を焙煎し高級コーヒー豆にブレンドした「soba」二種類のオリジナルブレンドコーヒーを提供。「ジャングルデリバリー」とのコラボでは、オリーブの葉で作ったオリーブ抹茶を使用したラテを開発した。

館林市「ジャングルデリバリー」のオリーブ抹茶を使ったコラボドリンク(写真提供)

「YAMATOYA COFFEE 32は『群馬県の魅力を発信していく場所』」と話す平湯さんは、コラボ商品の開発に意欲的だ。大和屋が積極的に地元食材とのコラボを行う背景には「群馬ならではのコーヒーを作りたい」「お客様にとっての珈琲の楽しみ方を広げてほしい」という想いが大きい。平湯さんは「群馬県庁という県の象徴的な場所に店舗を開いたことで、改めて”群馬に根付いた珈琲を作りたい”と思った」と強く語る。続けて「2023年7月からは、群馬県産ブルーベリーのコラボ商品が出ますよ」と楽しそうに話してくれた。

2023年7月から期間限定販売のブルーベリーパフェ。群馬ブランド推進課Gアナライズチームとのコラボメニュー。

大和屋珈琲の未来

 日本ならではの「炭火焼き珈琲」の味わいや、香りの奥深さを、日本の文化と共に海外に発信していくことが平湯さんのビジョン。将来的には、「炭火焼き」という日本ならではの技法を活かし、海外展開も視野に入れている。

現在は珈琲の本場であるアメリカのシアトルやポートランド、カフェの激戦区であるパリやウィーンでのテストマーケティングも検討中だという。「珈琲のおもしろさや楽しさを広めると同時に、群馬県の魅力発信もしていきたい」と言葉にも熱がこもる。

また新たな取り組みとして、群馬県発の「純国産珈琲」の開発をはじめた。現在高崎市内で200本のコーヒーの苗を植えて、2022年に初めての収穫を終えたところ。この取り組みが成功すれば、「純国産珈琲」が県の新たな特産品となり、群馬の魅力を知ってもらうきっかけとなるだろう。

高崎産コーヒーの樹(写真提供)

また「珈琲豆ができる過程も多くの人に知ってもらいたい」と平湯さん。珈琲豆は「実を収穫する」「皮を剥く」「焙煎する」といったプロセスを経て私たちの手元に届く。平湯さんは「こういったプロセスを実際に体験してもらい、珈琲の奥深さや手間のかけ方を知ってもらうことで、珈琲の面白さを広めていければ」、そして「珈琲をより身近に感じていただきたい」と締めくくった。

珈琲文化の普及と地域への貢献を通じて、より多くの人々に珈琲の魅力を伝える大和屋。同社の取り組みが実を結び、日本ブランドとしての「大和屋の炭火焼き珈琲」が世界に広まる日はそう遠くないかもしれない。「珈琲の面白さと楽しさ」と「地元群馬の魅力」を融合させ、珈琲愛好家や地域の人々に魅了される存在となっている大和屋は、これからも成長と発展を続けていくことだろう。

<プロフィール>
株式会社大和屋
①「大和屋」物販小売店舗のグループ展開
②コーヒー豆の卸・小売販売
③コーヒー関連商品のPB開発、卸・小売販売
④陶磁器、雑貨の卸・小売販売
⑤喫茶・カフェの運営、メニュー開発など経営支援

【編集部後記】
「YAMATOYA COFFEE 32」がオープンしてからは、仕事の合間に度々足を運んでいました。同フロアにある「コワーキングスペースNETSUGEN」で開催されたお茶会イベントにて、珈琲の試飲をさせていただいたり、新商品のアイスクリーム試食会に参加したり。大和屋さんの商品力やPR力にはとても興味がある中、県の事業で平湯さんとご一緒したこともあり、一度じっくりとお話を伺ってみたいと思っていたところでした。今回は大和屋さんの歴史から、フードペアリングのお話、今後の展開に至るまでお聞きでき、本当に楽しい時間でした。NETSUGENで仕事をする際はまた利用させていただきます。(ライター 田波彩)

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