【イノベーター】「顧客に寄り添ったDX支援を実現したい」デジタル・イノベーションLab代表 田中 秀彰さん

 今回インタビューに応じてくれたのは、群馬県内に拠点を構えながら中小企業を中心にITコンサルティングを行うデジタル・イノベーションLab代表の田中 秀彰さん。新卒からITシステムベンダーに勤めていた田中さんは、働く中で持った「IT業界への違和感」をきっかけに2021年に起業されています。現在は「価値ある企業を後世につなげる」というミッションを掲げ、DX・デジタル化に悩みを抱える中小企業をサポートされています。今回は田中さんに、創業のきっかけや事業内容、将来のビジョンについてお話を伺いました。


創業のきっかけは「IT業界への違和感」? 顧客目線で企業のDXを支援

ー現在の仕事内容を教えてください。
 ITコンサルティング会社の代表として、中小企業に対してITプロジェクトの推進を支援しています。地方の中小企業の中には、まだまだITシステムを効果的に活用できておらず、紙やエクセルといった煩雑なアナログ作業が残っている企業も多いです。一方で「DX(=デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術を用いた業務プロセスの改善や新規ビジネス創出のこと)」というキーワードがビジネストレンドとして注目されているように、デジタルを活用して業務を効率化したいという企業も増えています。

そこで問題になるのが、世の中にある業務システムやITツールの種類が多すぎて、どのサービスが自社に最適なのか分からないということです。そこで弊社は、企業の業務全体を可視化・分析し、その会社にあった最適なシステムをコーディネートすることで業務改善を支援しています。

ーデジタル・イノベーションLabを創業したきっかけは何ですか
 新卒で働いていたシステムベンダーでの経験がきっかけです。入社当初からITコンサルタントとして、業務課題を抱える企業に対して自社システムの営業と導入プロジェクトの管理を担当していました。

さまざまな企業のシステム導入を支援する中で、徐々に「今自分が売ろうとしているシステムは、本当にお客様にとってベストなものなのか」という疑問を抱くようになっていました。もちろん自社が提供しているシステムは、良いものではありました。一方で、企業の課題や要望と照らし合わせた時に、もっとお客様の運用にマッチしたシステムがあるのでは、という思いもありました。

今や、大クラウド時代。世の中を見回すと安価で便利なクラウドサービスがたくさんあります。しかし、業界構造として自社の売上を最大化するために、自社システムや代理店契約しているシステムを提案するケースが多いのも事実です。だからこそIT業界では、「本当に顧客のためになる提案というよりも、自社の利益につながりやすい提案に偏ってしまいがち」という矛盾を抱えています。

そういった構造に違和感を覚え、中立的な目線から顧客にとってベストなシステムを導入する仕事がしたい。そんな思いでデジタル・イノベーションLabを創業しました。

ー創業する際に、影響を受けた方はいらっしゃいますか
 株式会社 ビースマイルプロジェクト代表取締役社長の桑原 豊さんです。桑原さんは、2009年からワタミ株式会社の2代目社長として、外食産業を牽引してきた方です。全国的な飲食チェーンの経営からスタートアップの立ち上げまで、何歳になっても新しいフィールドで挑戦し続ける姿勢に刺激を受けました。事業の立ち上げをお手伝いさせて頂いた経験があるのですが、仕事に向き合う姿勢、情熱、人を巻き込む力、全てにおいて勉強させて頂きました。お酒の席では、人生経験や仕事への想いをたくさん聞かせて頂き、「いつか桑原さんの様な魅力的な経営者になりたい」と強く影響を受けました。

企業のITリテラシーを向上させることが、本質的な業務改善につながる

ー群馬県内の企業が抱える課題にはどんなものがありますか
 過去に担当したクライアントの中には、紙とエクセルの両方を使って情報を管理していたり、たくさんシステムを導入しているものの、それぞれが連携しておらず業務の重複が発生したりしている企業もありました。県内トップクラスの売上高を誇る企業でも、デジタルを活用した業務効率化の余地が残っているところはかなり多いと感じています。

そして、ITプロジェクトは進め方が命です。「システムを導入すれば終わり」というものではなく、その後の業務のあり方や、組織のあり方が変わってはじめて業務効率化が達成できます。

私はその場しのぎのお手伝いはしたくないと考えているので、正しいプロジェクトの進め方や考え方を企業に根付かせることを意識しています。私がいなくなった後も、自社の社員だけでプロジェクトを回していただけるよう、ノウハウを惜しみなく提供しています。だからこそ、1つのプロジェクトに対して半年から1年以上というスパンで伴走させていただいています。

ー独立してからの田中さんの心境の変化を教えてください
 覚悟が変わりました。独立して経営者になるということは、全て自分の責任になります。信じて契約してくれたお客様を絶対に裏切るわけにはいきません。そのためには、常に新しい情報を取り入れ、行動し続ける必要があります。もちろん会社員時代も努力はしていたつもりですが、独立してからより一層、仕事に必死に向き合うようになりました。

出会いの幅が広がったことも、独立してよかったことの一つです。人が全てだと思っているので、積極的に人脈を広げる活動をしています。その結果、思いもよらない繋がりがたくさん生まれて、日々刺激をもらっています。こういった出会いは何事にも変えられない財産だなと思うので、今後も大切にしていきたいです。

ー田中さんが今後やりたいことは何でしょうか

日本の中小企業のITリテラシーを上げていきたいです。残念ながら、世の中にはシステム導入を後悔している会社がたくさんあります。「高額なシステムを導入したけど、活用できていない」「システムに縛られてやりたい事業が展開できない」という会社も少なくありません。中小企業にとっては、そのような失敗は本当に致命的です。

そんな失敗を避けるためには、ユーザー側が正しいIT知識やプロジェクト推進方法を身につける以外に方法はないと考えています。「お金を払っているんだからシステム会社が何とかしてくれる」という「お客様は神様」マインドを捨てないといけません。

ITと正しく向き合い、競争力を高め、真のDXを果たせる企業を1社でも多く生み出していきたいです。そのためにもSNSやセミナーでの発信、またプロジェクトでのお客さんとの対話を通して、ITの苦手意識を少しでも無くしていただけるような取り組みを行いたいと思っています。

(プロフィール)
デジタル・イノベーションLab
代表 田中 秀彰
・1986年 群馬県渋川市生まれ
・業務系ソフトウェア会社にてITコーディネーターとして12年間従事
・中小企業庁認定のIT専門家として企業のIT化をサポート
・システム導入〜運用まで幅広くサポート
・ご支援企業数:約50社(上場企業含む)
・2021年7月〜 独立し事業スタート

●デジタル・イノベーションLabホームページはこちら

https://digital-ilab.com/

【LocalBooK編集部後記】
 日本は他の国と比較すると、中小・零細企業の割合が多いと言われています。小規模企業の業務がデジタル化し生産性が向上することは、日本の産業全体の生産性向上にもつながります。顧客の課題に真摯に向き合う田中さんの取り組みが広まることで、群馬県、ひいては全国の中小企業が盛り上がっていってほしいです。(ライター:鈴木 智華)

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